クトゥルー×日本神話×SFの怪物的クロスオーバー
栗本薫『魔界水滸伝』という“80年代エンタメの怪作”を知っていますか?
1980年代の日本SF・伝奇小説の中で、いま読み返しても圧倒的な熱量を放つシリーズがあります。 それが 栗本薫『魔界水滸伝』。
「クトゥルー(クトゥルフ)神話 × 日本神話 × 現代SF × 群像劇」 という、普通なら破綻しそうな要素を全部まとめて、しかも面白くしてしまった“怪物シリーズ”です。
■ 『魔界水滸伝』ってどんな物語?
悪夢に導かれて自らが古代神の末裔だと知った大学生たちが、侵略を進めるクトゥルー邪神に対し、人類とともに三つ巴の地球規模の戦いへと巻き込まれていきます。

「魔界水滸伝」あらすじ
身体が溶ける悪夢に悩まされていた大学生の伊吹涼・白鳥夏姫・藤原華子らは、銀座の画廊で集められ、狂気の画家・葛城繁が残した絵がクトゥルー邪神による地球侵略を予言していることを知る。さらに、自分たちが日本に古来から存在する神々──先住者──の血を引く末裔であり、地球を守る使命を負っていると告げられる。一方その頃、邪神たちはすでに侵略を開始しており、神々の末裔・人類の軍勢・邪神勢力が三つ巴で激突する壮大な地球規模の戦いが幕を開けていく。
■ 作品の魅力をざっくり紹介
● ① クトゥルー(クトゥルフ)神話を大胆に再構築
ラヴクラフトの邪神たちが、現代日本に本気で侵略してくる。 しかも、ただの怪物ではなく“文明を滅ぼす知性体”として描かれるのがポイント。
● ② 日本神話との融合が独特すぎる
アマテラスやスサノオといった神々ではなく、 “先住者”という独自設定で神話を再構築。 クトゥルーと並んでも違和感がない世界観が秀逸。
● ③ 群像劇としての熱量がすごい
大学生、ルポライター、元活動家、軍人、超能力者…… とにかくキャラが多いのに、全員が物語に深く関わっていく。
特に、地球防衛の中心人物となる ルポライター・安西雄介 の存在感は圧倒的。
● ④ 永井豪の挿絵が世界観にハマりすぎ
カドカワノベルズ版の挿絵は永井豪。 “デビルマン的な熱量”が作品の雰囲気と驚くほどマッチしている。
■ シリーズ構成
- 本編:全20巻(完結)
- 第1部「魔界誕生編」
- 第2部「地球聖戦編」
- 外伝『白銀の神話』:全4巻
- 続編『新・魔界水滸伝(銀河聖戦編)』:4巻まで刊行(未完)
長いけれど、読み始めると止まらないタイプのシリーズ。
■ どんな人におすすめ?
- クトゥルー神話が好き
- 日本神話・伝奇ものが好き
- 80〜90年代の熱いエンタメ小説が好き
- 群像劇・大河SFが好き
- “設定の濃い作品”にワクワクする
ひとつでも当てはまるなら、刺さる可能性が高いです。
『魔界水滸伝』は、 「こんな組み合わせアリなの?」を全部“アリ”にしてしまった伝奇SFの金字塔です。
今読むと、ライトノベルや現代エンタメ小説の源流が見えてくるような作品でもあります。
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