『THE SIN 罪』
新人女優シヨンが挑む、恐怖と謎に満ちたデビュー作

あらすじ
新人女優シヨンは映画撮影のため、山奥の廃墟へと足を踏み入れる。癖のある監督とのトラブルで現場の空気は悪化し、次第に彼女は不気味な幻覚に悩まされる。撮影が始まり、監督の指示で奇妙なダンスを披露するシヨン。しかし体調不良で撮影は中断され、それをきっかけに撮影隊は恐ろしい事態へと巻き込まれていく――。
監督はハン・ドンソク氏。本作がデビュー作である。
見返すほど面白い構成
一度観終わると「そういうことだったのか」と納得する場面が多いが、同時に「あのシーンはどういう意味?」と疑問も残る。二度目に観ると、それらがすべて伏線として機能していることに気づかされる。余分なシーンは一切なく、日常描写すら意味を持っていたのだ。恐怖演出だけでなく、緻密な構成が本作の大きな魅力である。
インスパイアの源泉
韓国映画は他作品からの影響を受けつつも、独自の面白さを生み出す力がある。『THE SIN 罪』からは日本の『エコエコアザラク』シリーズをはじめ、70年代から2000年代にかけてのオカルト映画の影響が感じられる。『サスペリア』『レガシー』『死霊のはらわた』『VERSUS』などがその例だ。だが単なる模倣ではなく、監督の力量によってオリジナリティが際立っている。
韓国映画らしさと編集の妙
韓国映画は一幕が長めになりがちだが、本作ではむしろエピローグが長く取られている点が特徴的。過去と現在を交錯させる編集も巧みで、観客を見事にミスリードする。構成の新鮮さが作品全体を引き締めている。
韓国ホラーの傾向
日本で公開される韓国ホラーは「呪い」や「恨み」を題材にすることが多い。祈祷師の登場や聖書の引用も頻繁に見られる。これは宗教的背景や社会的プレッシャーが影響しているのかもしれない。本作もその系譜にありつつ、独自の切り口を見せている。
エンディングは観客次第
終盤は二転三転し、感情移入の振れ幅が大きい。筋は通っているように見えるが、腑に落ちない部分も残る。これは監督の意図であり、結論を観客に委ねる仕掛けだ。韓国ホラー映画には同様の手法が散見され、ひとつの潮流になりつつあるのかもしれない。
総評
『THE SIN 罪』は、Jホラー的要素を最小限に抑えつつ、古典的オカルト映画の魅力を巧みに取り入れた作品だ。恐怖演出だけでなく、緻密な構成と伏線回収が観る者を唸らせる。デビュー作ながら監督の力量を強く感じさせ、次回作にも大きな期待を抱かせる一本である。